以前、勤めていた会社は社員数20人にも満たない、いわゆる「零細企業」だった。
しかし、世間様の持つ悪いイメージとは違っていたと思う。
きっちり定時で帰れるし、朝も朝礼に間に合いさえすれば、どんなにギリギリでもOK!
年収は平均より少し下ぐらい(地方なので仕方ないのかも)だが、
独り身なら家賃払っても人並みの生活が十分できる。
有給も申請さえすれば取れるし、年間休日も120日以上。
タバコ休憩もいつでもできるし、仕事中の飲食も自由。
割と条件は良かったと思う。
なぜ、こんな会社が存続できていたかと言うと、
「お金を儲けるための仕組みが完成されていたから」
レベルの高いスキルもいらないし、普通以上のコミュニケーション能力も必要ない。
決まったレールの上をみんなが自分のペースで走るだけで良かった。
実際、求人を出す際も、
特別なスキルを持つ人よりも、「長く勤めてくれそう」だとか、「若い」だとか、
当たり前のことを当たり前にできれば良いって感じだった。
では、なぜこの好条件の会社を辞めたのか?
当たり前すぎて申し訳ないのだが、
「その仕組みが崩壊し始めてきた」のがきっかけです。
ある日、仕組みを作った人が現役を退き、新しい役員が経営に携わることになった。
ところが、ただレールの上を走ってきただけの人に経営が勤まるわけがない。
少しづつ仕組みが崩壊していった。
「このままではヤバイ!利益を生む新しい柱を立てなくては!」
と経営陣は焦りだすのだが、もちろんそんなに簡単にいくはずがない。
ただただお金を生み出さない会議を繰り返すだけになった。
そして、一番やっかいだったのが、
「優秀な社員よりも、ダメ社員が多いこと」
結局、組織だと少数の意見の多くは多数派に潰される。
「そんなことしたら私の仕事が増えるでしょ!」
「それ絶対うまくいく保障があるの?失敗したらどうするの?」
「それは私の仕事ではありません」
ぬるま湯に浸かりすぎた社員はそこから抜け出せず、変化を嫌い、
自分の都合でしか物事を判断できなくなる。
そんなの組織である意味がない。
会社が傾くことも、このぬるま湯思考になってしまうことも怖かった。
それに、「レールの上を早く走る能力」と「レールを作る能力」。
どちらが大事かは一目瞭然だが、実際に身をもって体験したことで、
改めてその重要さを知ることになった。
「給料を貰うのではなく、お金を稼ぐ力を身につけなくては」
その思いが会社を辞める決断をした。